「傘をもたない蟻たちは」(加藤シゲアキ著/KADOKAWA、1300円+税、提供写真)【拡大】
特にその意図が強く表れたのが、人類に美味と官能をもたらす宇宙生物「イガヌ」をめぐるSF(「イガヌの雨」)だろう。「編集者からのオーダーは『食』をテーマにした作品を、ということでした。せっかくなら『やっていないことをやりたい』とSFに挑戦しました。この作品で描きたかったのは『欲望』。欲望とSFという世界観の親和性の高さは、自分でも発見でした」
自身の表現模索
書き続けることへの思いを、「執念」と呼んだ。「僕は賞をもらったわけでもなく、何段もスキップして作家になったという負い目がある。1作目で、書店員さんに言われたんです。『書き続けないと、応援できないよ』って。一冊出ることと、書き続けることは違うと身をもって知りました。もし自分が文芸界に恩返しできることがあるとすれば、僕を入り口にして『小説って面白いんだな』と思ってくれる人がひとりでも増えてくれることなのかな」