【本の話をしよう】
SANKEI EXPRESSに月1度のコラム「アートクルーズ」を執筆している美術批評家、椹木野衣(さわらぎ・のい)さん(52)が、初めての新書に刺激的な芸術論「アウトサイダー・アート入門」を書き下ろした。アウトサイダー・アートとは、言葉づらでは社会からはみ出た人たちのアート。ところが、読後には、そうした見方が一変するかもしれないインパクトを持った本である。
執筆のきっかけは、1993年に世田谷美術館で開かれた米国からの巡回展「パラレル・ヴィジョン-20世紀美術とアウトサイダー・アート」だった。パラレル(並行)と名付けられているように、クレーやボルタンスキーら巨匠たちの作品と、名も知れぬアウトサイダー・アーティストたちの作品が並べられていた。しかし、「アウトサイダー作品の力は(巨匠たちの作品と)何ら遜色がない。インサイダー・アートと同じぐらいの価値があり、それに気付かなかっただけなんだ」(椹木氏)と思い当たった。