そうした内面性は、人間としての苦しみ(病苦、孤独、離別、被災、困窮、追放、受刑、隔離)から生まれる。取り上げたアーティストは肉親の死や虐待、赤貧、監禁など、想像を絶する「不幸」を体験している。社会の理不尽や不条理にさいなまれながら、芸術からは祝福された果実がアウトサイダー・アート。さらに「はなから信じ込まれた社会の美意識や価値観を暴力的に相対化しようとする」アウトサイダー・アーティストこそ真のアーティストとも言える。それは善悪を超えたところに存在し、犯罪者や精神障害者らが担い手になることも多い。
しかし、ここ3~4年前から、もともとの概念は同じ「アール・ブリュット」という言葉が、国の支援の拡大とともに単なる「障害者のアート」という狭い意味に取られる風潮が広がりつつある。今回の著書は、犯罪者の作品や公序良俗に反するアートが本来の範疇(はんちゅう)から排除される危険性に、警鐘を鳴らす意味もある。