例えば、お店の総菜に関するエッセーで、彼女はこう読者に語りかける。「ちょっと待った、そこのあなた。煮魚は買ってもいいけど、おひたしは作ろう。せめて、副菜になるおかず作りを習慣にしよう」。疲れて帰る道すがら、誰だって家での料理を面倒くさく感じてしまうことはあるだろう。そして、そんな弱気の虫を誰かに糾弾されたら僕らは謝るしかない。今日も出来合いの総菜で、すみません。もちろん皆わかっているのだ。家で自分が作ったものの方が、おいしくて体によいことも。けれど、理想通りにはなかなかいかないもの。そんな時、長尾はこの本で、もう一歩階段を下りてきて手を差し伸べてくれる。ダメな僕らを承認しつつ、どうしたら食卓に一品だけでも自作の料理が並ぶのかを一緒に考えてくれる。続くページでは、こんな長尾のレシピが並ぶ。グリル長ネギやあぶりきのこのオイルマリネ。カリフラワーやミニトマトの甘酢漬け。そうか、これなら冷蔵庫で保存もきくし、なんとかなるかもしれない。