バイトを掛け持ちして生活費を稼いだ。それでも金が足りない。切羽詰まって、大切なバイオリンを質に入れた。手にしたのはわずか3000円…。
「さださんはバイオリン奏者を目指したが、挫折した。この部屋で哲学書や詩集を読んだ。壁にもたれてギターを弾き、作曲した。人生の転機となった。平川荘はファンにとって聖地ともいえる場所です」
聖地か。現地に行ってみよう。館内でもらったイラスト入りの地図を手に国分2丁目を目指す。丘陵地。緑濃い森が残る。住宅地が広がる。石垣の上。アパートは姿を消し、白い2階建ての民家があった。初老の女性が語る。
「ここに平川荘がありました。昔、子供たちが『テレビに出ているのにどうしてこんなアパートに』っていってましたよ」
帰路。周辺を逍遥する。さださんが通ったという銭湯は健在だった。ふと、あの1970年代の青春を思い起こす。激烈だった。(塩塚保/SANKEI EXPRESS)
■逍遥 気ままにあちこち歩き回ること。