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新たな「レンズ」通し「記憶」と向きあう 「忘れられた巨人」著者 カズオ・イシグロさん (3/5ページ)

2015.6.16 16:30

国家の記憶を描いたカズオ・イシグロさん。「忘れた方がいいのか、それとも…。一概には言えないが、ときには忘却が社会の崩壊を防ぐ手立てとなることもある」と考察する=2015年6月8日、東京都千代田区(長尾みなみ撮影)

国家の記憶を描いたカズオ・イシグロさん。「忘れた方がいいのか、それとも…。一概には言えないが、ときには忘却が社会の崩壊を防ぐ手立てとなることもある」と考察する=2015年6月8日、東京都千代田区(長尾みなみ撮影)【拡大】

  • 構想から15年。「どのようなツールで描くのが最適か、悩みました。忘却の霧を吐く竜というアイデアを思いついた瞬間、すっと筆が動き始めました」と語る、作家のカズオ・イシグロさん=2015年6月8日、東京都千代田区(長尾みなみ撮影)
  • 「忘れられた巨人」(カズオ・イシグロ著/早川書房、2052円、提供写真)

 「きっかけとなったのは、ボスニアなどの内戦です。私の世代は、ずっと冷戦による核戦争の恐怖におびえてきた。冷戦が終わって、いい世の中になると思ったのに、内戦が起きてしまい、落胆しました。ボスニアやユーゴは、ヨーロッパに暮らす私たちにとって、バカンスで遊びにいったりと、とても身近な土地ですからね。社会的な記憶は、ときには武器として使われることもある。それは戦争がないところでも同じです。忘れられた巨人はどこにでも埋められている」

 構想は15年ほど前からあった。しかし、世に送り出すにはどのような形を選べばいいのか。その煩悶(はんもん)が月日を必要とした。

 「トラウマがある状態で、社会がいかに苦しみながら記憶と向き合うか。その状況を描くため、最初は『携帯電話によって人々の記憶がなくなってしまう』というようなSF的な設定も考えましたが、この作品のなかでディストピア(暗黒郷)を作り出す気にはなれなかった。ボスニアのような場所を舞台に現代劇として描くことも可能だったでしょう。でも、それではルポルタージュになってしまう。作家として書くべきは、歴史の中で繰り返し発生するそのもの。ファンタジーという神話的な世界に落とし込むことで、メタファーとして描くことができた」

2人が一緒になった後に直面する人生の難問を描くことこそが

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