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新たな「レンズ」通し「記憶」と向きあう 「忘れられた巨人」著者 カズオ・イシグロさん (4/5ページ)

2015.6.16 16:30

国家の記憶を描いたカズオ・イシグロさん。「忘れた方がいいのか、それとも…。一概には言えないが、ときには忘却が社会の崩壊を防ぐ手立てとなることもある」と考察する=2015年6月8日、東京都千代田区(長尾みなみ撮影)

国家の記憶を描いたカズオ・イシグロさん。「忘れた方がいいのか、それとも…。一概には言えないが、ときには忘却が社会の崩壊を防ぐ手立てとなることもある」と考察する=2015年6月8日、東京都千代田区(長尾みなみ撮影)【拡大】

  • 構想から15年。「どのようなツールで描くのが最適か、悩みました。忘却の霧を吐く竜というアイデアを思いついた瞬間、すっと筆が動き始めました」と語る、作家のカズオ・イシグロさん=2015年6月8日、東京都千代田区(長尾みなみ撮影)
  • 「忘れられた巨人」(カズオ・イシグロ著/早川書房、2052円、提供写真)

 愛も一つのテーマ

 巨大な記憶と対比して、もう一つ浮かび上がるのが、老夫婦の愛の物語だ。「ラブストーリーって、結婚したり、愛が成就するとそこで終わりでしょう? それにずっと疑問を持っていたんです。2人が一緒になった後に直面する人生の難問を描くことこそが、愛とは何かを問いかけることだと思うのです。ここでは、『忘れられた記憶を根拠にした愛は果たして真実なのか』ということを問いかけています」

 なぜ、“記憶”に向きあい続けるのか。「『記憶』を書きたくて作家になったようなものですね…。私は5歳で日本からイギリスに移住し、いつかは日本に帰るかもしれないと思いながら生きてきた。でも、20代の最初の頃から、頭の中にある日本の記憶がどんどん消えてきた。私の頭の中にある日本を保存するために、小説を書き始めたのです。何を覚えて、何を忘れるのか。記憶に対する一個人としての関心から、作家としての私が始まっています」

作家 Kazuo Ishiguro略歴

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