近藤は子供のころに読んだ漫画「ドラえもん」で鏡が題材だった物語を思い出す。「過去の自分が鏡の向こうにいる未来の自分に、これからどう生きるか相談したくなった。今回は実際に会えるようで面白い」
4人が集まるのは2012年12月から翌年1月に上演した長塚作「音のいない世界で」に次いで2作目。新国立劇場の親子向けシリーズの一環で、前作は「音泥棒」がテーマ。「大人の童話」の風情もあった。
「ぜひ次回作を」という4人の思いが実を結んだ今回は、ブラックユーモアとファンタジーがないまぜになったような内容だ。鏡の向こうに広がる神秘に着目した長塚が、戦いや愛とを絡ませた。物事を大人と違う角度で眺める力を持つ子供に、世界は陽気なだけではないことを感じてもらう。大人には、子供の頃に感じたはずの好奇心や想像力を、思い出してほしいという願いも込められる。
プラモ作りと一緒
一方で前作より子供が興味を持てるような工夫を意識。鏡をはさみタナカとカナタ、コイケとケイコがペアで織りなす動作の妙はその入り口になる。振り付けする近藤は「話の意味と鏡の反応の面白さ、大人と子供にどう感じてもらうかのさじ加減は難しい。複雑なプラモデルを作るのと一緒」と話す。