シェークスピアの問題劇とされ、過去の上演回数は少ない。悲劇と喜劇が混在し、原作は中途半端に終わる印象すらある。だが「こんなに面白い作品とは思わなかった」との声が多く寄せられ連日、盛況だという。演出の鵜山仁(うやま・ひとし)はじめ文学座のベテラン勢が脇を固め、主演の浦井健治が実力で応えて結果につながった。
描かれるのは恋愛が大義名分となる戦争の顛末(てんまつ)だ。舞台となるトロイ戦争は、ギリシャから妃が奪われて始まる。トロイ王子トロイラス(浦井)が愛したクレシダ(ソニン)は、捕虜交換でギリシャに引き渡され、将軍ダイアミディーズ(岡本健一)に求愛される。
女たちは敵と味方に翻弄され、生き抜くために愛した男を裏切る。真面目に恋と戦に励む男たちの姿は、時としてほほ笑ましくもおかしい。生々しく描かれる人間の本音は観客の共感を呼び起こす。