米首都ワシントンのアメリカン大学でイラン核合意に関する演説を行うバラク・オバマ大統領。強い語気で野党・共和党側に合意の承認を迫った=2015年8月5日(ロイター)【拡大】
ユダヤ教徒でイスラエルと関係の深いシューマー氏は声明で「イランが合意を自らの不埒(ふらち)な目的のために使おうとする危険性は非常に大きい」と主張。最終合意に基づいて制裁を解除すれば、イランが最終的に核保有国になる可能性があるとして、制裁の維持、強化を求めた。
米議会はイラン核合意審査法に基づき、9月17日まで60日間の審査期間に最終合意を承認するかを決める。決定は9月にずれ込む見通しだが、共和党はすでに下院で不承認決議案を提出しており、上下両院で不承認とする構えだ。
オバマ氏が拒否権を行使しても「両院の3分の2以上」の再可決で覆せるため、ユダヤ系のロビー団体は賛成、反対の両派に分かれ、巨額の資金を使って議員への働きかけを強めていると米メディアが伝えている。キーマンの一人であるシューマー氏の「造反」の意味は大きい。
16年前と重なる状況
残り任期1年半となったオバマ氏の「レガシー(政治的遺産)」の成否は米議会が握っている。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)しかり、イラン核合意しかり。議会の強さを見せつけられるたびに、「国対政治」という言葉がかろうじて残っていた20世紀末に日本の政府首脳がオフレコで吐き捨てた言葉を思い出す。