「農民とヘリコプター」(2006年)。3チャンネル・ビデオ、カラー、サウンド、手作りの実寸大ヘリコプター。250×1070×350cm、15分。Collaborating_Artists:Tran_Quoc_Hai,Le_Van_Danh,Phu-Nam_Thuc_Ha,Tuan_Andrew_Nguyen。Commissioned_by_Queensland_Gallery_of_Modern_Art,Australia。展示風景:「ディン・Q・レ展:明日への記憶」森美術館=2015年(永禮賢さん撮影、森美術館提供)【拡大】
レはインタビューで、ベトナムに帰国してからについて、「私はアメリカナイズされすぎていました。頑張って適応しようとしても、なかなか変われませんでした。完全に帰国してから約20年が過ぎましたが、いまでも自分が100%ベトナム人だとは考えていません」と話す。まさにレ自身が、ベトナムとアメリカの文化で編み上げられたゴザなのだ。
今年、日本は第二次世界大戦後70年。ベトナムも戦後40年の節目に当たる。「傷ついた遺伝子」は、一見かわいいベビー服。だが、結合双生児のものと分かると息をのむ。戦時中まかれた枯れ葉剤の影響を思わせ、いまだに戦争の傷痕が癒えていないことを思い知る。
ポル・ポト侵攻から逃れて一時“難民”となったレは、中東の政情不安などによって増え続ける難民にも目を向ける。オーストラリアで発表した「抹消」は、難民が乗って難破した船、燃え上がる帆船の画像が組み合わされたインスタレーション。船の周りには、おびただしい古い写真がちらばっている。