自然に回帰した「鉄の彫刻家」　「若林奮　飛葉と振動」 (1/4ページ)

　【アートクルーズ】

　鉄などの金属を用いて、大気や水、光などおよそ彫刻では表現しにくいものに挑戦した若林奮（いさむ、１９３６～２００３年）の回顧展「飛葉と振動」が、「神奈川県立近代美術館　葉山」（神奈川県葉山町）で開かれている。晩年に携わった庭造りで「（自分の）名前は無くなっていい」と話した若林。その創作人生は、自分の中の自然を再発見し、自然に回帰する旅だったように思えてくる。

　形のないものを作りたい

　一言でいえば、若林の作品は難解だ。それは自ら語っているように、「形のないものを作りたかった」からだろう。「泳ぐ犬」には、その姿勢が端的に表れている。一目、明確なのは犬の頭の上半分だけ。その下は変哲もない直方体の木柱だ。しかし、目を凝らせば、犬かきをしながら泳いでくる犬の体が見えてこないだろうか。木柱は「水」であることが明らかだ。

「世界の終末の予感が発想の根底になっている」