【アートクルーズ】
日本画の下絵や画稿を集めた展覧会「絵の始まり 絵の終わり」が、武蔵野美術大学美術館(東京都)で開かれている。完成した本画が、いわば化粧をほどこした“ステージ上の顔”だとすれば、下絵や画稿は、作家の苦悩やこだわり、癖などが如実に残る“素顔そのもの”といえる。それはある意味、本画よりドラマチックでさえある。
伝わる飽くなき努力
村上華岳(1888~1939年)の「裸婦 画稿」(1920年、20日から展示)は、代表作「裸婦図」(1920年)の画稿と思われる。女性の輪郭は白い胡粉(ごふん)で塗りつぶされ、描き変えた跡をとどめている。とくに顔は真っ白で、表情を何度も描き直した跡が顕著だ。
村上はこの作品で、西洋と東洋の美の融合、あるいは生身の肉体と菩薩(ぼさつ)の精神性の調和というテーマに挑んでおり、この画稿は、その苦闘を彷彿(ほうふつ)させる。なかでも顔の表情の研ぎ澄ましは、豊満な肉体に負けない精神性を表現する最大のポイントとして、最後まで妥協を許さない作業だったに違いない。