世界との距離を測る
その後、創作の転機となったのが、73~74年にかけての文化庁「芸術家在外研修」だ。「アルタミラ洞窟」などスペインやフランス、エジプトの遺跡を巡るうち、旧石器人と自分のつながりや、過去から現在に至る「時間の層」を意識するようになる。そこから生まれてきたのが「振動尺」という考え方だった。
若林の振動尺とは、対象物との“距離”を測る物差し。この距離は空間だけではなく、時間の厚み(歴史)だったり、共感だったり…。作家の内面にある主観的なものだが、若林は振動尺で自然や世界との距離を測るようになる。
そして晩年、手がけた庭造り。霧島アートの森につくられた「4個の鉄に囲まれた優雅な樹々」についてのインタビューで若林は「うまくいけば植物は人間の命より長く生きる。人間の仕事を示す鉄はやがて風化する。その時間のズレを、自分は最後まで見極められない。見る人には、樹木が美しく育ってくれればいい。若林の名前は無くなってもいいのかもしれない」と話した。