「面白さ」が創作の核
自身も商社などに勤めながら作品を発表し続けてきた。「私小説ではないけれど、自分の文学人生をフィクションにしてみたら面白いかな、と」
“面白さ”こそが、創作の核だという。「僕は純文学やエンタメとか、ジャンルにはこだわっていません。どうしたら面白くなるか、それだけです。ストーリーの展開が面白いこともあるけれど、本当の面白さは、また違うと思っている。今回の作品でいえば、主人公がYの木を発見するところです。いつも通っているはずの道なのに、突然、運命的に気づき、死の想念にとりつかれる。道の角をふいと曲がった瞬間に新しいものが見えてくるような、そんな瞬間に満ち満ちているほどいい小説だと思う。そして、その瞬間はささやかであるべきだ」
淡々とした筆致で、文学への愛と鎮魂を込めた表題作。かと思えば、短編「シンビン」では、ラグビー場で試合を観戦する2人の女の駆け引きを、スリリングに切り取る。「ラグビーでも野球でも、スポーツはみな遊びで観戦するものですから、書く方も遊び心がないとね」