「記事を各章の最初に載せるという構成は、挑戦でした。デビュー前に小説教室に通っていたのですが、そこで教わったのは『小説は、人のこれからを書く』ということ。でも、私は人の過去を書くのが好き。『この人はどういう人生を送ってきたんだろう?』と想像し、立ち止まって、遡(さかのぼ)ってしまうんです。だったら、今回は先に結末を見せてしまおうと。『なぜこういう結末になったのか?』という謎を物語の推進力にしました」
一人の女の存在
一見ばらばらな、それぞれの人生だが、その裏には貴和子という一人の女の存在が見え隠れする。「各章で描いた5人の小説でもあるし、貴和子の小説でもある」。地味な見た目でありながら、人の心をざわつかせる貴和子。男は貴和子への恋情に狂い、女はコンプレックスを募らせる。「貴和子は鈍くさくて、見下されがちなのだけれど、実はその人の人生に強い影響を与えている。読者の感想でも、貴和子が怖い、憎たらしいという人もいれば、切ない、大好きといってくれる人もいる。貴和子は『色のない女』。読む人によって、また物語を読み進めるごとに、異なる色を見せてくる」