どろどろとした感情をえぐりながらも、不思議と読後感はさらりとしている。抑えた筆致ゆえだろうか。「間取りや住所、ポストの位置や色、形といったディテールまで、小説の土台となる設定自体は徹底的に作り込むのですが、文章自体は大事なところを書かない小説が好き。説明が一切ない小説を目指しています」
文章自体もだが、ラストについてもあえて過剰な説明を避けた。「実はこのラストをめぐる物語を一話書いていたのですが、あえて封印しました。人の死って、本当のことは分からない。全部種明かしをするよりも、余韻があるほうが残る。断片が夢に出てくるような小説になっていれば理想かな。何度も読み返して、自分なりの『真実』を見つけてくれればうれしいです」
記事の向こう側にちりばめられた貴和子という“謎”。夢の中まで、探しに行こう。(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■まさき・としか 1965年、東京都生まれ。札幌育ち。2007年に『散る咲く巡る』で第41回北海道新聞文学賞を受賞。著書に『夜の空の星の』『熊金家のひとり娘』『完璧な母親』『途上なやつら』がある。
「きわこのこと」(まさきとしか著/幻冬舎、1500円+税)