“田舎”に閉じ込められた少年少女の鬱屈を、息苦しいほどに描く。「1週間ぐらいで一気に書き上げた作品です。きっかけは東日本大震災。福島県南相馬市出身なのですが、正直、大学から上京した私にとって、故郷って黒歴史でした。でも、震災で、もしかしたら故郷がなくなってしまうかもしれない状況に直面すると、自分でも意外でしたが、それはイヤだなと強く思ったんです。同時に、メディアで繰り返される『大切なふるさと』というイメージにも違和感を持ちました。故郷ってイヤな部分もある。それを書くことが、屈折しているけれど、私なりの故郷への思いでした」
同じR-18文学賞を受賞した山内マリコさんら、地方都市を舞台にした作品を書く若手作家の活躍が近年目立つ。「受賞したのは、山内さんのデビュー作が刊行される前でしたが、単行本化に向けて作品を書いていく中で、自分が書けることは何だろうと考えるようになりました。地方都市の乾いたイメージだけでなく、湿度を書きたい。自分が書けるものは、それしかないのではと」
印象的なタイトルにも、強い思いを込めた。「勝ち逃げって、ずるいじゃないですか。この作品に出てくるのは、みなずるいことができない人ばかり。結局は負けちゃうんですけれど、逃げるぐらいは許されてもいいんじゃないかなって」