【本の話をしよう】
実力派ミステリー作家、柚月裕子さん(47)が新刊『孤狼の血』で、初めて極道小説に挑んだ。違法行為もいとわないマル暴刑事と、暴力団の闘いを沸き立つような熱さで描く。
「描きたかった世界」
今まで、女性を主人公にした作品を多く重ねてきた。しかし、本作のメーンの登場人物は、ほぼ全員男性。まさに、男の世界だ。「男っぽい作品が好きなので、ずっと描きたかった世界でした。でも、調べることも多いですし、筆力も求められる。それに、アウトローものというと、男性作家のイメージがあります。その中で私が描くということに、どういった意義を見いだすか。私はよくも悪くも『やったモン勝ち』という信念の持ち主。描くからには、今出せる力を出し切ろうと」
1988(昭和63)年の広島。新米刑事の日岡がタッグを組むことになったのは、暴力団との癒着が噂される大上だった。目的のためなら手段をいとわない大上の姿に反発を覚えながらも、ある失踪事件をきっかけに、暴力団同士の対立に巻き込まれていく。果たして日岡と大上は、血みどろの抗争を阻止することができるのか-。