戦力外通告を受けた直後のオフ、練習で顔を合わせる機会があった。大学の後輩ということもあって、「もっと練習しないとあかんぞ」と厳しい言葉をかけた。メジャー球団との契約は格好良く映るかもしれないが、生計を立てられるようになるには、本当の大リーガーにならなければいけないからだ。
3A初の日本人最多勝
5年目の今季。彼はついにメジャーへとはい上がってきた。日本のプロ野球で1勝はおろか、1試合の登板すらできなかった右腕が、インディアンスの先発マウンドを任された。30歳。聞いたり読んだりして知った人は、何か簡単なことのように思うかもしれないが、メジャーまで上がってきたのは本当に並大抵なことではない。
最初からメジャー契約で、食事も宿泊先のホテルも用意されていた私には、彼の5年間を想像することすらできない。
世界中から「アメリカン・ドリーム」を夢見て選手が集まるのがマイナーリーグだ。「育成」よりも「ふるい落とし」が目的ともされる過酷なサバイバルが待っている。彼は、そこから勝ち上がってきたのだ。