と話すのは、「印傳の山本」の山本裕輔さん。「甲州印傳伝統工芸士資格」を日本で唯一保持する山本誠さんの息子であり、印傳の次代の担い手だ。
甲斐国(現在の山梨県)は、確かに資源が豊富とはいえない。限られた環境の中で、手に入る資源で生産できるもの、として作られたのが「甲州印傳」なのである。
鹿革を加工した工芸品の歴史は、飛鳥時代にまで遡(さかのぼ)る。だが、盛んになったのは戦国時代である。丈夫な上に柔軟性に富む鹿革は、武具にぴったりだった。そして、かの武田信玄が「信玄袋」と呼ばれる甲冑(かっちゅう)を入れるための袋を用いたことから、「甲州印傳」の歴史が本格的に始まった。
正確には、甲州で作られる鹿革工芸品に「印傳」という名前がついたのは、江戸時代である。東インド会社がもたらした装飾革を模して作ったものを「印度伝来」という意味で「印傳」と呼ぶようになったのだという。その後、装飾性もさらに高まり、巾着袋などさまざまな用途に用いられるようになった。