物語の舞台は埼玉の小学校。そこに通う生徒たちが、偶発的に起こってしまった核爆弾の暴発から生き延びることになる。校庭に設置されていたシェルターへ偶然にも逃げ込むことができたのだ。生き残った唯一の大人、北川ひろみ先生(美人)と122人の生徒は、外の放射能濃度が下がるのを待ち、核の冬という厳しい時代を生きざるを得ない。汚染されていない水や食料を探し、他の生存者を探索。世界は滅亡してしまったのか? いくつもの死を乗り越えながら少年少女は、前に進む…というあらましなのだが、その重いテーマが小学生だった僕らにはずしんと響いた。死の灰を浴びた北川先生が、それをひた隠そうとする健気さ。大人になって読むから、わかることも多々あると思える佳作である。
復刊10周年のお祭り
さて、もうひとつ紹介する「飛ぶ教室」だが、こちらは光村図書から出版されている児童文学の雑誌である。発刊は1981年だから、かなり歴史のある雑誌。当時は河合隼雄や今江祥智らが編集委員を務め、その誌面から梨木香歩の『西の魔女が死んだ』や池澤夏樹『南の島のティオ』が生まれた。江國香織を発掘したということでも知られている。その後、雑誌「飛ぶ教室」は95年にいちど休刊してしまうのだが、2005年に石井睦美が編集人となり復刊。今年は復刊10周年のお祭りというわけで、かなり思い切った編集方針を打ち出していておもしろい。なんと今年1年間は、毎号編集長を変わるというのだ。