【本の話をしよう】
「とにかくアキレス腱だけは気をつけてください」。祭が開始する直前、みちのく銀行の菊池さんが念押ししたのはそれだけだった。彼はこう続ける。「あとは思うがままに楽しんで!」。これから書くのは、僕が初めて体験した青森ねぶた祭で受けた驚きと感銘の手記である。
誰でも参加できるねぶた祭
8月3日から青森県を訪れた僕は、その夜に「弘前ねぷたまつり」を見学した。青森ねぶたが戦の祝勝祭なのに対して、弘前のねぷたは戦へ向かう出陣の儀式を祭にしたものなのだそう。荘厳で、緊張感を孕(はら)み、山車の列も粛々と街を練り歩く。ちなみに弘前の祭りは「ねぶた」ではなく「ねぷた」。なんだかかわいらしい響きではないか。一言で「ねぶた」といっても最も有名な青森ねぶただけでなく、弘前ねぷた、近年人気の「五所川原立佞武多(たちねぶた)」など、多種多様な地域の祭があるらしい。恥ずかしいことに、そんなことすら知らずに僕はのこのこと青森までやってきていたのだ。