「ラッセラー」の掛け声とともに
みちのく銀行の衣装は、浅葉克己がデザインしたという勇猛な赤黒の浴衣。じつに勇ましいが、残念ながら僕の中では緊張感の方が上回っていた。都内の居住地区周辺の祭にすら参加したことのない男が、いきなりのねぶた祭デビューである。踊りも掛け声もわからぬまま、さあさあと促されるまま祭の行列に加わった。
時刻は午後7時5分前。今宵も祭が始まるぞという熱気が、四方八方から伝わって来る。青森の言葉で「じゃわめぐ」というらしいが、血の騒いだ者たちの声出しも始まり、いよいよスタートが近づいてきたことを実感する。青森ねぶた祭は8月2日から7日まで6日間行われ、今日は3日目。明日、明後日と行われる審査の前日だが、ウオーミングアップなどといったヤワな言葉は許されぬ。毎日が本番。毎日が真剣。みちのく銀行に所属する初代ハネトの野澤俊さんに「ラッセラーラッセラー」という掛け声と左右交互に足をケンケンする動きを教授してもらい、アキレス腱伸ばしを再度念入りにして祭の始まりである。
国道4号線からスタートしたわれわれハネトの前には、前ねぶたという小型のねぶたがあり、後ろからは祭の主役とも言える巨大な人形灯籠、大型ねぶたが続いて来る。その後ろには囃子方が続き、大きな太鼓や笛、手振り鉦の音が踊り手を活気づける。彼らの奏でるリズムに押し出されるように、僕の初ねぶたも前に進みだした。