しかも、このアルバムは、ジャズ系のレコード会社ではなく、最先端の音楽プロデューサーであるフライング・ロータス主宰のブレーン・フィーダーというレーベルからリリースされた。ブレーン・フィーダーは、ビートミュージックと呼ばれるヒップホップと電子音楽を組み合わせた前衛的なサウンドの総本山として、テクノやロックの愛好家からも評価されている。そのブレーン・フィーダーが、新人ジャズ奏者を世に送り出したことは衝撃的だった。カマシ・ワシントンの人気は、音楽性の評価が高まるにつれ、盛り上がりを見せた。
現代的な要素随所に
ジャズ界の巨人、ジョン・コルトレーンの弟子で、1970年代に活躍したファラオ・サンダースの後継者と評される、カマシ・ワシントン。スピリチュアル・ジャズと呼ばれる神聖にして高揚感あふれる音楽は、ゴスペルの影響を感じさせるコーラス隊の起用や、時にくるおしい響きを持つ即興演奏が特徴的である。
しかし、『ジ・エピック』は単なる過去のリバイバルではない。ヒップホップのリズムを参照し、R&Bにも通じるボーカル曲も収録されている。さらに、ブレーン・フィーダーならではのエキセントリックな効果音やベース・ラインの導入など、現代音楽のエッセンスが随所にちりばめられたアルバムだ。