《支持率低迷にあえぐイタリア最大野党の党首、エンリコ(セルヴィッロ)は、総選挙を目前に控え、ついに精神を病み、ある日忽然(こつぜん)と行方をくらませる。パリに住む元恋人、ダニエル(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)の自宅に雲隠れしてしまったエンリコに困り果てた部下のアンドレア(ヴァレリオ・マスタンドレア)は、エンリコの双子の兄弟で、大学で哲学の教授を務めるジョバンニ(セルヴィッロ)に接触。替え玉となってくれるよう懇願する。これを了承したジョバンニは、ウイットとユーモアに富んだ言葉で瞬く間に有権者たちを魅了。苦肉の策であったはずが、「政権交代は確実な情勢」との世論調査結果が出るまでの大躍進をもたらすが…》
原点見つめ直す契機
説明じみた描写がくどくどとなされるわけでもないのに、登場人物の背景が不思議なほどすんなりと頭に入ってくるところが本作の印象的な点だ。「まあ主人公が双子というのは皆さんもすぐに分かるでしょう。この映画がイタリア総選挙の前に公開されたことも影響しているかもしれません」とセルヴィッロ。実際の演出、演技についてはアンドー監督と相談したうえで、「私たちは政治家、エンリコの憂鬱さと、哲学者のジョバンニの饒舌(じょうぜつ)さをくっきりと対照的に描き出そうとしました。エンリコは党の支持率低下という現実から逃げてしまう。