独裁者だけを描かず、独裁者と孫の物語とした理由は何だろう。「孫も一緒に描くことで、怖い独裁者も一人の人間であり、決して妖怪ではなく、どこにでもいる普通のおじいさんなんだよ、と描けるわけです。かわいい孫に対しておじいさんが抱く優しい気持ちを表現することもできますよね。独裁者も一皮むけば純粋な人間なんだといえます。人間のさまざまな側面に、あらゆる角度から光を当て、人間の考察を試みたのがこの作品なのです」。12月12日から東京・新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:荻窪佳(けい)/SANKEI EXPRESS)
■Mohsen Makhmalbaf 1957年5月29日、イラン・テヘラン生まれ。映画監督のほか、小説家、脚本家、プロデューサー、人権活動家の顔を持つ。2005年に亡命後、ロンドンとパリを拠点に生活。映画の代表作は、01年「カンダハール」、12年のドキュメンタリー「庭師」など。