「原題『Allacciate_le_cinture』は『シートベルトをお締めください』の意味です。人生で遭遇する乱気流に備えてほしいという気持ちを込めました」と語るフェルザン・オズペテク監督=2015年5月1日、東京都中央区(高橋天地撮影)【拡大】
自らもゲイであることを公言し、映画を通じ、社会から隔絶されたマイノリティーの生き方を模索してきたフェルザン・オズペテク監督(56)は、イタリアを拠点に活動するイスタンブール出身の裕福なトルコ移民だ。記者たちにもジョークを連発するなど、底抜けに明るい振る舞いとは裏腹に、彼の手がけた作品群からは、胸のうちにしまいこんだ孤独と自己肯定感への渇望がほとばしり、見る者に迫ってくる。
しかし、共同で脚本も担当した新作のヒューマンドラマ「カプチーノはお熱いうちに」は趣を異にしており、オズペテク監督はSANKEI EXPRESSのインタビューに「『男女の真の愛とは何か』と正面から問いかけてみたかったのです」と映画化の意図を明かした。
2人の間に漂うもの
南イタリアのフィレンツェとも呼ばれる美しい街、レッチェ。カフェで働くエレナ(カシア・スムトゥニアク)は雨の日のバス停で筋骨隆々の武骨な大男、アントニオ(フランチェスコ・アルカ)と出会い、やがて結ばれる。13年後、勤め先から独立し、ゲイの親友、ファヴィオ(フィリッポ・シッキターノ)とともに始めたカフェが成功し、2人の子供にも恵まれ、公私ともに多忙で充実した日々を送っていたエレナに健康診断で乳がんが見つかる。