「原題『Allacciate_le_cinture』は『シートベルトをお締めください』の意味です。人生で遭遇する乱気流に備えてほしいという気持ちを込めました」と語るフェルザン・オズペテク監督=2015年5月1日、東京都中央区(高橋天地撮影)【拡大】
映画化を思い立ったのは7年前。ガンを患っていた親友の女性を元気づけようと自宅で催したディナーパーティーの席上だった。
「彼女は美人でしたが、過酷な治療の結果、とてもやつれてしまいました。私は大の仲良しだったので、失礼とは思いながらも思い切ってこんな質問をしてみました。『まだ旦那さんとは寝てるの?』。すると彼女は『もちろん。それに彼はたまに求めてくるのよ。男の人って女性がどんな状況にあってもお構いなしなのね』と答えたのです。我々が大笑いしていると、旦那さんが気づいて近づいてきました。そのとき彼女と旦那さんの目が合い、しばらくの間、熱く見つめ合っていました。私は茫然(ぼうぜん)と2人のまなざしを眺めながら、そこにある真の愛を強く感じたのです」。このときに交わした監督と彼女の軽妙なやり取りは、舞台をエレナの病室に移して脚本に盛り込まれている。
どんな姿でも求める
オズペテク監督は、激しく求め合う男女の恋愛感情が歳月を経てどのように真の愛へと熟していくのかを丁寧に描いてみせた。男女が愛を保つ秘訣(ひけつ)というものはあるのだろうか。