決して自伝的映画ではない
SANKEI EXPRESSのメール取材に応じたボグダノヴィッチ監督は、主人公のアーノルドは自分の分身だと明かす。「物語は実体験に着想を得て綴(つづ)ったものだから私はアーノルドの気持ちがよく分かるんです。1970年代にシンガポールの娼館(しょうかん)を舞台にした映画『Saint Jack』(79年)の撮影で娼婦たちと話す機会がありました。『故郷に帰りたい』と漏らす娼婦たちに対し、僕はお金を渡して、家に帰してやったのです。アーノルド以外の人物に関しては、ほぼフィクション。だから本作は決して自伝的映画ではないです」
脚本を書き始めたのは2000年からで、元妻のルイーズ・ストラットンとの共同執筆だった。「当初、私の友人でもあるジョン・リッター(1948~2003年)を主人公に想定していましたが、彼が急死してしまったため、私たちは映画化を中断しました。その後、(本作の主演である)ウィルソンと知り合い、友達になりました。彼はなかなかいい役者でしたので、私は一緒に映画を作りたくなりました」。一度お蔵入りした事情と映画化への経緯を解説した。