初春新派公演「糸桜」(松竹提供)【拡大】
劇団新派の久しぶりの新作は今年、生誕200年の歌舞伎作者、河竹黙阿弥のひ孫の登志夫作「作者の家」が原作。黙阿弥の娘で、自身の祖母に当たる糸の人生をつづった長尺の評伝を、脚本・演出の斎藤雅文がコンパクトにまとめた。
糸(波乃久里子(なみの・くりこ))は父亡き後、独身で枝垂れ桜のある家を守ってきた。信州から上京して新劇の文芸協会にいた繁俊(市川月乃助)を養子にとり、嫁に商家の娘、みつ(大和悠河(やまと・ゆうが))を迎える。父の業績の継承に心をくだく糸と、荷の重さに反発する繁俊。明治から大正へ、関東大震災をはさむ激動の時代を経て、糸がたどりついた境地とは何か。
斎藤は役柄に、主要人物を演じる俳優らの実人生を投影させた。波乃の父は十七世中村勘三郎。歌舞伎役者の家に生まれ、父を敬いつつ、新派の歴史と伝統を継承する立場は糸の人生と重なる。市川は歌舞伎界から新派に移籍して初の舞台。一般家庭から伝統芸能に飛び込んだ人生は、歌舞伎と縁のない環境から河竹家に入った繁俊の境遇と共通する。大和は初の新派客演で、宝塚歌劇団出身らしい華やかさを見せる。