寡作で知られるが、今作は数カ月で約450枚を書き上げるという異例のスピードだった。「自分にとってはあり得ないスピードですね(笑)。これは自分だけの本ではない。多くの人、多くの状況をたたき込んでいく。たくさんの人に背中を押される感覚でした」
たどり着いた新たな祈り。「自己模倣が嫌いなんです。少ない作品でも楽しみにしてくれる読者がいてくれる限り、新しいことを提示するというのが、僕なりの読者との向かい方なのかなと思います」。闇の底から一気に浮上するとき、圧倒的な光に包まれる。(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■てんどう・あらた 1960年、愛媛県生まれ。86年『白の家族』で第13回野性時代新人文学賞受賞、93年『孤独の歌声』が第6回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。96年『家族狩り』で第9回山本周五郎賞受賞、2000年『永遠の仔』で第53回日本推理作家協会賞(長編部門)受賞、09年『悼む人』で第140回直木賞、愛媛県文化・スポーツ賞、13年『歓喜の仔』で第67回毎日出版文化賞受賞。SANKEI EXPRESSでの連載を書籍化した『だから人間は滅びない』(幻冬舎新書)も好評販売中。
「ムーンナイト・ダイバー」(天童荒太著/文芸春秋、1500円+税)