【本の話をしよう】
善意は悪意より恐ろしい-。『告白』をはじめ、数々のヒット作を放ち続ける人気作家、湊かなえさんの新刊『ユートピア』。海辺の地方都市を舞台に、3人の女性が抱える「いま」への違和感を、鋭く描く心理ミステリーだ。
「今まで『悪意』を中心に書いてきましたが、今度は『善意』に挑戦しました。善意は、押しつけてしまうと相手にとっては悪意にもなる。善意という形をとっているから、断りにくいですし。そんな、自分たちが“善”だと信じて突き進んでいる人を書いてみたいと」
立場異なる3人の女性
物語の舞台となるのは、太平洋を望む港町・鼻崎町。日本有数の食品会社「ハッスイ」の工場があり、そこの社員、昔ながらの地元民、そして新たに引っ越してきた芸術家たちと、異なるコミュニティーの人々が暮らしている。
「近頃都会からやってきた人が、“町おこし”に奮闘しているというニュースをよく見ます。でも、受け入れる側の人は『別に助けてもらおうと思っていない』などと、実は温度差があるのではないか。ある意味今回の主人公は『町』。まるでジオラマのように物語を組み立てていきました」