地元商店街の菜々子の娘・久美香は、交通事故のため、車椅子で生活している。久美香は、ハッスイ社員の妻として転勤してきた光稀の娘・彩也子と、ふとしたことから友情を育むようになる。二人の絆を知った陶芸家・すみれは、車椅子利用者を支援するブランド「クララの翼」を立ち上げる。菜々子、光稀、すみれ。3人の異なるコミュニティーに暮らす女性は、ブランドを通じて理解を深めていく。
「菜々子は町の中にいる人、すみれは外から来た人。光稀は望んで鼻崎町に来たわけではない『中間』の人。それぞれがそれぞれのコミュニティーに、どこかなじめないものを抱えている。だからこそ、3人は急速に仲を深めていく」
40代が抱える焦燥
有名女性誌に取り上げられるなど、順調に広がりを見せていく「クララの翼」。しかし、やがて「久美香は本当は歩けるのでは」との噂が流れ、連帯がきしみ始める-。
徐々に浮き彫りになっていくのは、3人の「自分が今いる場所は、ここではない」という屈折した思い。菜々子は夫への鬱屈を蓄積させているし、すみれは芸術家として大成していないことへのコンプレックスを抱えている。光稀も東京への憧れを捨てきれない。40代の女性が抱える焦燥を、これまでよりもさらに深みの増した筆致で描く。