社会派ヒューマンドラマ「火の山のマリア」は、日本初の劇場公開となるグアテマラ映画だ。日本人にとってはあまり情報がないグアテマラの今がリアルに感じ取れる、極めてユニークで意義深い作品である一方、テーマそのものを口にしただけで即ネタバレとなってしまうという難点もあり、なかなか記者泣かせの代物である本作。“プロモーション”で来日したグアテマラのハイロ・ブスタマンテ監督(38)は申し訳なさそうな表情を浮かべ、読者にこう伝えてほしいと要望した。
「小さな子供を持つマヤ系先住民(マヤ人)の母親の身に実際に起きた事件を取材し、脚本を執筆しました。昔からグアテマラの人々が頭を抱えている身近な問題です。執筆にあたっては、主人公としたマヤ人の少女が『完全なる被害者』であるということを常にイメージしながら、物語を構築していきました」。映画のテーマ選びではいつも、観賞した後、深く考えざるを得ない状況に追い込まれるような硬派なものに食指が動くというブスタマンテ監督。本作では、自身も幼少期を過ごした古代マヤ文明の地を舞台に選び、意表を突くストーリー展開と、鋭い社会批判を行間にさりげなく織り交ぜる得意の語り口で臨んだ。