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文明社会はハンセン病(癩病)を差別しつづけた 『ハンセン病:日本と世界』という記念すべき一冊 松岡正剛 (2/5ページ)

2016.2.28 14:30

 1980年代後半、MDT(多剤併用療法)が提案され、これが施行されるようになると、ハンセン病は完治する病気になった。それゆえ、まもなく世界中の発症率は激減するのだが、文明社会がハンセン病に捺し付けたスティグマ(烙印)による無数の傷は、いまだに癒えてはいない。

 文明の傷はなかなか語られなかった。それでも日本では北条民雄の『いのちの初夜』や明石海人の短歌集を嚆矢(こうし)に、しだいにその深さと悲しみが訴えられ、ハンセン病文学全集も編纂されるようになった。その後も多くの患者や回復者が差別の実態を訴え、心の傷の吐露を続けてきたのだが、実はいっこうに事態は改善しなかった。やがて笹川良一と陽平の父子による救援活動がグローバルに広がるなかで、やっとハンセン病を正面から語る地歩が築かれていった。

 来たる3月4日から赤坂ACTシアターで三島由紀夫の『ライ王のテラス』が宮本亜門の演出で上演される。ライ王とは、アンコール王朝期に、病魔に冒されながらバイヨン寺院の建設に夢を託したカンボジア王のことで、体を蝕まれつつも最後に観世音菩薩の姿になっていくという物語だ。ライ王は癩王なのである。三島は、王たらんとする者によって「癩」の本質が、癩者であることによって「王」の本質が吐露されるというドラマをつくり、北大路欣也による初演のあと、決起して自決した。ぼくはこの舞台を見たのち、さまざまな思いをこめて「文明の病い」に向けて黙祷したいと思っている。

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