【BOOKWARE】
岩波茂雄には本が出来上がってくると、表紙やページを掴んでさかさまに振り、製本がちゃんとしているかを確かめるクセがあったようだ。ときどき本を机や床に投げつけて、それでも丈夫かどうかを確かめたという逸話ものこっている。
本は著者がいて編集者がいて印刷者がいても、本にはならない。製本者によってやっと本になる。編集屋にとって、自分が手掛けた本が製本されて届いてきたときの晴れがましさは、仕立てたばかりの洋服に腕を通すようで、なんとも落ち着かないほど格別な気分になるものなのだ。
文字や写真や図版の中身が印刷されたページは、いったん16ページずつの「折り丁」になる。これを15折とか32折とかに束ねて断裁し、接着剤・針金・糸・リング等々で綴じ合わせ、見返しで表紙が取れないように貼り付けて仕上げるまでを「製本」(英語はbookbinding、postpress)という。フランス語では「ルリユール」(reliure)というのだが、これは手工芸的な製本をさすことが多い。フランスにいる羽田野麻吏のルリユールは美しい。