外国人投資家、アベノミクスへの期待低下 日本株売り越し 「骨太方針」にも冷淡

 

 政府は11日に、子育てや女性・高齢者の就業支援を柱とした経済財政運営の指針「骨太方針」の骨子を示した。だが、日本株の売買で6~7割のシェアを握る外国人投資家が昨年度は7年ぶりに売り越しに転じるなど、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」への期待感が低下しているのは否めない。アベノミクスは円安・株高を足がかりとした経済の好循環を描いてきただけに、正念場を迎えている。

 「一時期みられたような外国人投資家のアベノミクスに対する強い期待感は大きく後退してしまった」。三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストはこう語る。背景として、日銀の異次元の金融緩和策にもかかわらず物価がなかなか上昇してこないことや、安倍政権が昨年9月に掲げた「新三本の矢」は即効性が見込みにくいことなどがあるという。

 東京証券取引所によると、外国人投資家は平成27年度に、東京・名古屋の2市場で約5.1兆円売り越した。売り越しは「リーマン・ショック」が起きた20年度以来7年ぶり。売越額としては、米ニューヨーク市場の大暴落を契機に世界的株安に陥った「ブラックマンデー」があった昭和62年度の約6.2兆円に次いで過去2番目の規模だ。

 新年度相場入りした今年4月(4月4~28日)に外国人投資家は8604億円買い越した。ただ、一時は1ドル=105円台まで円高が進むなど日本株への逆風は収まっておらず、日経平均株価の11日終値は昨年末終値を約13%も下回り、低調な動きが続いている。

 市場関係者によると、昨年末あたりから一部の外国人投資家の間では日本株の見通しを引き下げる動きが出ていたという。今年3月には、世界最大の資産運用会社の米ブラックロックが日本株の見通しを「強気」から「中立」に下げた。

 野村証券の木下智夫チーフ・マーケット・エコノミストは「さらなる法人税減税、経済成長の制約要因となっている労働力不足への対応、企業による賃上げを後押しするような措置が出てくれば、外国人投資家へのアピールになるのではないか」との見方を示した。