課税逃れ対策、国際協調に影も キャメロン首相辞任で議論停滞懸念

 

 英国の欧州連合(EU)離脱が国際的な課税逃れ対策に影響を及ぼす可能性が出てきた。EUはこれまで課税逃れを防ぐルールづくりを先導し、なかでも英国のキャメロン首相は20カ国・地域(G20)などによる多国籍企業の課税逃れ対策の議論を推進してきたキーマンだ。これらの枠組みが実行に移される最中にキャメロン氏が去り、英国とEUの足並みが乱れれば、議論が停滞する懸念もある。

 タックスヘイブン(租税回避地)の節税実態を暴露した「パナマ文書」問題を受け、課税逃れ対策は今年の先進7カ国(G7)やG20の主要議題になった。

 G20と経済協力開発機構(OECD)は新たな課税逃れ対策の枠組みを始動する。1つが海外への資産隠しを防ぐため、各国当局間で自国に居住しない外国人の金融口座情報を自動的に交換し合う協定。もう1つが多国籍企業の過度な節税を防ぐ15の共通ルール(BEPS)だ。

 「キャメロン首相辞任は影響があると思う」。財務省幹部は不安を口にする。

 キャメロン氏は2013年に当時の先進8カ国(G8)首脳会議(サミット)議長として「課税の透明性」を最優先課題に掲げ、BEPSの議論を提起した。また、英国領にはケイマン諸島やバージン諸島など租税回避地が多くある。課税逃れ対策の実効性を高めるため、これらを軒並み金融口座情報の自動的交換の枠組みに参加させた。キャメロン氏辞任後も英国がこの推進力を持続できるか、先行きは不透明だ。

 税の抜け穴をふさぐには新興国も含むできるだけ多くの国の国際協調が不可欠で、日米欧には模範を示し、各国をリードする役割が求められる。だが、英国のEU離脱交渉が長期化し、課税逃れ対策に対しても温度差が表面化するような事態になれば、各国を主導するどころではなくなり、課税逃れ対策の国際協調に影を落としかねない。

 30日から7月1日には京都でOECDの租税委員会が開かれ、金融口座情報の自動的交換やBEPSの課題を議論する。英国のEU離脱決定後の初会合であり、課税逃れ対策への影響が注目される。

 ■京都で開催されるOECD租税委員会のテーマ

 【金融口座情報の自動的交換】

 ・非協力的な国・地域を特定する基準を決定→基準は枠組みへの参加の公約や、税の透明性を審査する国際組織の評価基準を満たすかなどになる見通し

 【多国籍企業の課税逃れを防ぐ共通ルール(BEPS)】

 ・参加国が現在の46カ国から拡大する見込み→共通ルール実行に伴う法改正や実施状況の審査、新興国の支援などを協議