しかし、海外勢は違った。米国も欧州も現在、深刻な「バランスシート不況」に見舞われているが、クー氏によれば「借り手不足という問題の全体像をわかっている人は少ない」。確かに量的金融緩和で株価は上昇したが、量的金融緩和で資金供給量が増えたからではない。
その証拠に、黒田東はる彦ひこ・日銀総裁がマネタリーベース(現預金と金融機関による日銀当座預金の合計)の倍増を宣言する前に株価が先回りして上昇している。つまり「なんだかよくわからないが、すごいことになりそうだ」程度の期待で買った海外投資家が多かったということだ。クー氏は、「日本の民間部門がゼロ金利でもお金を借りないことを知らない人たちが買いに動いた」と分析している。
現実にはアベノミクスで株価が8割上がって、為替は2割の円安に動き、日本経済を取り巻く風景は一変した。「風景が変わったことで、人々が消費や投資に前向きになったのは本当にラッキーだった」。
そして黒田氏の異次元緩和から1年が過ぎた今、クー氏が海外機関投資家を訪問すると、「1年前にとった行動は本当に正しかったのか?」と質問してくる投資家は少なくないという。