ところが、黒田日銀総裁は「異次元金融緩和があるので、増税しても景気は回復基調を続ける」と安倍首相を説き、増税に踏み切らせた。
下のグラフは円の対ドル相場と、物価の変動分を加味した実質賃金の指数を、リーマン・ショックが起きた2008年9月を100として追っている。アベノミクスが始まるまでの特徴は、円高局面では実質賃金が大きく落ち込んできたこと。そして全体としては1997年4月の橋本龍太郎政権による消費税率引き上げ(3%から5%へ)以降、実質賃金は下降トレンドにあり、今年4月の税率8%へのアップ以降、下落速度に加速がかかったことである。
もう1つ、アベノミクス「第1の矢」である日銀の異次元金融緩和で円安に反転したのだが、円安にもかかわらず実質賃金が下落しており、円安=賃金アップという期待が消えてしまった。円安効果で輸入コストが上がり消費者物価上昇率が1%以上上がったのは日銀の思惑通りだったのだが、名目賃金は上がらないので、実質賃金はむしろ押し下げられた。4月には春闘で1%程度のベアは実現したのだが、消費税増税分の価格転嫁で消費者物価は2%程度、円安効果と合わせて3%台半ばまで上がった。実質賃金の急降下はこうして始まったのだ。