日銀の黒田東彦総裁が次の政策カードをどう切るのか。カギを握るのが金融政策決定会合で議決権を持つ審議委員の人事だ。
大規模な追加緩和を決めた昨年10月の会合では、議決権を持つ9人のうち賛成5人、反対4人の1票差で緩和が決まった。このうち賛成票を投じた宮尾龍蔵審議委員は3月、反対票を投じた森本宜久審議委員は6月に任期が切れる。再任される可能性はあるが、交代した場合、新委員の考えと黒田総裁を中心とする日銀執行部との距離感で政策の方向性は変わりかねない。
審議委員は国会の同意が必要な人事。安倍晋三政権は金融緩和に積極的な「リフレ派」を起用する見通しで、市場では「今夏には議論が紛糾しても6対3で緩和に踏み切れる態勢が整う」(エコノミスト)との見方が多くなっている。本田悦朗内閣官房参与も「アベノミクスを理解してくれる審議委員を選ぶのは当然」と語る。
ただ、円安を助長する追加緩和が有権者に支持されないと判断すれば、与党内で緩和反対派の人選が浮上する可能性も否定できない。日銀内にも、追加緩和の判断は「人事を見極めてから」という声は多く、審議委員の交代の行方に関心が集まっている。