「かつてのようなプロダクトデザインの世界は、今やなくなった。新しい製品ではなく、流れている製品の改良が延々と続く。そのプロセスの一部に組み込まれ、時間給で働くのがデザイナーになった。弁護士や歯医者と同じようなポジションだ」
こう語るのはフランチェスコ・トラブッコさん。巨匠マルコ・ザヌーゾのスタジオでキャリアをスタートさせ、その後、家電などのデザインを手がける一方、ミラノ工科大学で長年に渡り教壇にも立ってきた。イタリアデザインの黄金時代を築いたマエストロが次々とこの世を去るなか、その時代を直接見てきた証言者である。
「ミラノでも大きなデザイン事務所は、大企業をクライアントにした戦略デザインをメインとするところばかりだ。ウェブやグラフィックもやるが、プロダクトには手を出さない。やっているところは、大企業を数社、固定クライアントとしてもっているところだ」と、スターデザイナーが動向を左右した時代の終焉を強調する。
イタリアデザインで強みとしてきた家具や雑貨の世界は「実質と看板の間に大いに乖離がある」とバッサリときる。「外からみるようにはお金が回っていない」と判断する。「80年代に騒がれたデザインも、美術館かアンティークショップに行くものばかり」と。逆にいえば、イタリアデザインが実際の市場以上に大きく見せてきた手腕はたいしたものだ、ということになる。
ミラノデザインウィークにみるような家具や雑貨のプロトタイプの飽和状態は、ロイヤリティという仕組みと大きな関係にあるのでは?と質問する。
「関係があると思う。プロジェクトベースに企業がデザイナーに一括したお金を保証しない、成功報酬にも近いロイヤリティシステムは、企業家が十分にリスクをとっていると思えない」と手厳しい。