日本を代表する高級腕時計メーカー、セイコーウオッチが上海市内に置いている現地法人のオフィスで3月28日、58歳の中国人従業員の男が管理職の33歳の中国人女性の腹部を切りつけて死亡させ、近くにいた29歳の中国人女性にも顔面や腕などに大けがを負わせるという「企業内でまさかの殺人事件」(上海の日系不動産管理職)が起きたと地元メディアが報じ、中国に進出している2万社以上の日系企業に衝撃が走っている。
労使紛争がこじれて日本人の経営層が監禁されたり、違法な山猫ストを打たれて工場が何日もストップしたり、あるいは反日デモの際に店舗や工場を破壊されたりするなど、日系企業は長年にわたって中国でさまざまなトラブルを乗り越えてきた経験がある。だが、12年の中国駐在経験を持つある日系繊維メーカーの幹部は「日系企業のオフィス内で中国人従業員による同僚の殺人事件など聞いたことがない」と顔をしかめた。
さらに、「当社の上海オフィスや周辺の工場で、似たような従業員同士のトラブルが潜んでいないか、必死に調べさせているところ」と明かした。