オフィス内で中国人従業員の男が管理職の中国人女性を鋭利な金属で刺して死亡させた事件が起きた日系企業が入居している上海市内の商業ビル=19日(河崎真澄撮影)【拡大】
人ごとで済まされず
地元メディアは今回の殺傷事件について、社内で蓄積した加害者の怨恨(えんこん)が事件の背景にあると推測を交えて伝えている。ただ、上海の都市戸籍を持つ58歳の男という加害者が抱えていたとされる事情など、「噂ベースばかりで真相はおろか、事件概要もほとんど不明だ。他の日系企業にとって決して人ごとでは済まされないのに」と続けた。
セイコーウオッチに全額出資している親会社、セイコーホールディングスは産経新聞の取材に対し、「(加害者の男と2人の女性被害者は)いずれも当社の上海法人の従業員でオフィス内で起きた事件に間違いはないが、現地の公安当局による捜査中の案件であり、当社として情報公開する予定は今後も含めてない」(秘書・広報部)と答えた。想定外の事件で混乱が続く中、捜査の進展を待つ以外に手はないと判断したようだ。
他の日系企業が不安を募らせているのは「一般的に中国人は集団で暴動的な行為に走ることはあっても、日系企業に雇用されるほどのホワイトカラーの男が、後先も考えず社内で1人で殺人行為に及ぶ事態は、通常の行動パターンとしてまず考えられない」(電機大手幹部)との見方が主流だからだ。労使紛争などのトラブルを未然に防いだり、解決に導いたりするノウハウは日系企業にも積み上げられているが、「社内の殺人まで想定したリスク管理策は皆無」(同)という。