日銀は28日、金融政策決定会合を開き、2%程度の物価上昇率目標の達成見通し時期について、従来の「平成29年度前半ごろ」から「29年度中」に先送りした。円高や個人消費低迷の影響で物価の上昇基調は鈍っているが、7対2の賛成多数で追加金融緩和は見送った。これを受け、金融市場は円高株安が急速に進み、荒れ模様となった。
物価上昇率目標の達成時期の先送りはこれで4回目。総務省がこの日発表した3月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)が5カ月ぶりのマイナスに転じるなど、デフレからの早期脱却を目指す日銀のシナリオとはかけ離れた状況が続いている。
日銀は同日、30年度にかけての「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表した。物価上昇率見通しについて、28年度は前回1月の0・8%から0・5%に、29年度は1・8%から1・7%にそれぞれ引き下げた。原油安が長引いていることに加え、今春闘での賃上げが、日銀の当初の想定よりも小幅にとどまりそうなことを反映した。
景気の現状判断は前月の「基調としては緩やかな回復を続けている」を据え置いた。
物価上昇率目標の達成時期は先延ばししたが、日銀は追加の金融緩和には踏み切らなかった。その理由について、黒田東彦(はるひこ)総裁は記者会見で、「(2月に導入した)マイナス金利の政策効果の浸透度合いを見極めていくことが必要だと判断した」と説明した。その上で、今後も必要に応じて、追加緩和を行う考えを強調した。
日銀はまた、熊本地震の被災地に営業拠点を持つ金融機関に対し、年0%の金利で資金供給する支援制度を適用することも決めた。