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マツダ、国内ディーゼル市場牽引 「スカイアクティブ-D」拡大に自信

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マツダ、国内ディーゼル市場牽引 「スカイアクティブ-D」拡大に自信

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ディーゼルエンジン搭載車の人気が高いマツダ「アテンザ」  燃焼効率追求で低NOx実現

 マツダが開発したディーゼルエンジン「スカイアクティブ-D」。排ガスに含まれるすすや窒素酸化物(NOx)をいかに除去するかという従来の発想を転換し、エンジン内で軽油の燃焼効率そのものを高めることによって、「クリーン、パワフル、エコノミー」の三拍子を実現した。

 これを搭載した「CX-5」や「アテンザ」は販売好調で、マツダはさらに搭載車を増やす方針。環境対応車としてはハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)の普及も進むが、他社のガソリン車からの乗り換えも含め潜在的なディーゼルユーザーの掘り起こしを図っていく。

 最低レベルの圧縮比実現

 「当社が日本のディーゼル市場を広げつつある」。山内孝会長兼社長がそう胸を張るように、今年投入したCX-5とアテンザは受注の半分以上をディーゼル車が占めている。昨年国内で売れたディーゼル乗用車は約9100台だったが、今年はマツダの2車種だけで3万台を超える勢いだ。

 ディーゼルエンジンは、シリンダー内で圧縮されて高温になった空気に、軽油を噴射して爆発させる仕組みだ。圧力と温度が高すぎると、軽油と空気が十分混ざらず不完全燃焼し、すすやNOxの発生を招いてしまう。このため、1990年代からディーゼル人気の高い欧州を中心に、燃料噴射のタイミングを電子制御で最適化したり、排ガスに尿素水を吹き付けて化学反応でNOxを減らす環境技術が広がった。

 マツダもこうした新しい環境技術を欧州仕様車に採用していたが、NOx除去装置を搭載する分、車両価格が高くなる。このため、日本市場では普及が進んでいなかった。

 そこで、NOx除去装置が不要なエンジンを目指して開発されたのがスカイアクティブ-Dだ。シリンダー上部の燃焼室の容積を広げて、すすやNOxの発生要因となる「圧縮比」を14.0と世界最低レベルに下げることで不完全燃焼を抑制。シリンダー内の圧力が低くなることで、エンジンの「骨格」に当たるシリンダーブロックをアルミ製に変えることが可能となり、これまでより25キログラムの軽量化につながった。

 噴射装置精密化で始動確実

 ただ、圧縮比を低くすればするほど、低温下でのエンジンの始動性や、暖機運転の安定性が下がるデメリットも伴う。このため、他メーカーは二の足を踏んでいた。

 課題を解決するためにマツダが取り組んだのは、燃料噴射装置のさらなる精密化だ。燃焼1回当たり最大で9回の噴射を可能とし、状況に応じた最適な燃料噴射パターンで確実にエンジンがかかるようにした。

 また、排気される前の高温のガスを一部逆流させ、シリンダー内の温度を高める「排気可変バルブ機構」により、暖機運転の安定性も向上。さらに、大小のターボを使い分ける「2ステージターボチャージャー」を搭載、すすやNOxを抑制しながらエンジン回転数に応じた最適な燃焼を可能にした。

 ディーゼル車はもともとガソリン車より燃費が2~3割高い。日本の車の1割をディーゼルに置き換えれば、二酸化炭素(CO2)排出量を年間200万トン削減できるという。

 環境意識の高まりとガソリン価格の高止まりを背景に、ディーゼルの「復権」はさらに加速しそうだ。

 スカイアクティブ-Dは排気量2200ccの1機種のみだが、山内会長兼社長は「期待を持ってマツダを見てほしい」と、今後の拡充に意気込みを示す。(山沢義徳)

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