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日本、新幹線受注へ大きく前進 印と交渉再開合意、インフラ輸出の大チャンス
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インドのシン首相(左)と共同声明の署名文書を交わす安倍晋三首相=29日、首相官邸 安倍晋三首相とインドのシン首相が、高速鉄道計画の共同調査や原子力協定交渉の再開で合意したことで、政府が成長戦略の一つと位置付ける鉄道や原発などのインフラ輸出に弾みが付く。
台湾に続き海外で新幹線を受注する可能性が大きくなったほか、東日本大震災後に原発輸出交渉で出遅れていた日本にとって巻き返しの大きなチャンスとなる。国内市場が頭打ちのなか、官民一体でインフラ輸出を強化する。
「新幹線の輸出に向け大きく前進した」。国土交通省の幹部は、インドとの高速鉄道計画の共同調査に期待を寄せる。
日印首脳会談では、インド最大の都市ムンバイと工業都市アーメダバードを結ぶ高速鉄道計画で安全性や費用などについて共同調査することで合意した。
だが、同路線の受注はもともと仏車両メーカーのアルストムが有力視されていた。これに対し日本連合はJR東日本や川崎重工業の首脳、国交省の梶山弘志副大臣らが2月、現地を訪れセミナーを開くなど、官民一体での巻き返しに成功した。
高い経済成長が続くインドには新幹線以外にもモノレールや貨物専用鉄道の整備計画が目白押しで、日立製作所や川崎重工業などが受注を目指している。
インドとの原子力協定の交渉再開も、日本の原発輸出の追い風になる。原発は現在、世界で400基程度が稼働中だが、経済産業省は2030年までに90~370基程度増えると試算。なかでもインドは「潜在的な市場は中国に次ぐ規模」(国内原発メーカー幹部)だ。中国は原発建設で国産志向が強く、自国メーカーを優先するだけに、インド市場への期待は大きい。
原発輸出も官民一体での売り込みが不可欠だ。安倍首相は5月初めのトルコ訪問でもトップセールスを展開。現地で計画している原発について、三菱重工業と仏アレバの企業連合の受注が事実上決まった。
ただインドのインフラ輸出をめぐっては、建設に必要な電力や水道などの設備が十分に整備されていない。建設用地の買収に手間取れば事業費が膨らみ、企業側が利益を上げられない懸念もある。
大和証券の田井宏介シニアアナリストは、インドのインフラ輸出について「ビジネスチャンスとして大きいが、どれだけリスク回避を交渉に盛り込めるかが課題になる」と指摘した。