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なぜ?社員提案にこだわるアート 先進的なアイデアを次々と生み出す秘訣
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アートコーポレーションのユニークなサービス(写真は同社提供) 従業員が気軽に提案した新サービスが、次々と実践される。そんな風通しの良い社風を誇るのが、引っ越し大手のアートコーポレーション。業界に先駆けて展開してきたサービスの多くは、従業員の提案によるものだ。面白いのは、残念ながら「不採用」になった提案に対しても報奨を与えるというユニークさだ。なぜ、そこまで従業員提案にこだわるのだろう-。
アートが「業務提案制度」を創設したのは平成14年。社内で雑談中の従業員の口からアイデアがどんどん飛び出すようになっていた。「制度を設けてきちんと、提案してもらおう」ということになったようだ。
現在、社員数は約2千人。これに対し、年間の提案数は100件を超え、熱心さが感じられる。従業員は、企業内ネットワークのイントラネットなどを通じ、いつでも何度でも気軽に提案できる。
事務局は、まず「採用」と「不採用」に分類。事務局で採用されると、最終的に役員会にかけられ、「承認」か「不承認」となる。実用化し、社への貢献度が高いと判断されれば、社長賞や1~3等賞などが贈られる。
この制度で約2年前に誕生したのが、「エコ楽ボックステレビケース」。テレビの薄型化が進むにつれ、従来のテレビケースでは安定性が悪くなっていた。
そこで、薄型テレビの大きさに合わせて、ベルトを使ってケースの大きさを調整できるアイデアを考案。テレビの角も弾力性のあるパッドで保護した。何度も利用できる素材を採用し、環境面にも配慮した。
発案した40代の男性社員は社長賞を受賞。「引っ越し作業の現場で、薄型テレビが箱の中で揺れていたのがきっかけだった」という。
このほか、音の出にくい台車「サイレント台車」、クリスマスシーズンの引っ越しを申し込むと、子供にサンタ帽子をプレゼントする「サンタ・ハット・キャンペーン」も同制度から生まれた。
サイレント台車は、音が響く台車は近所迷惑になるという配慮から考案された。また、サンタ・ハットは、「引っ越しでクリスマスをじっくり楽しめなくなった子供を喜ばせよう」という従業員の気配りから生まれた。
同制度のミソは、事務局の選考段階で「不採用」になっても寸志が贈られ、報奨されること。背景には、「実現できなくても、どんどんアイデアを出してほしい」という会社の考えがある。
アートが業界に先駆けて展開してきたサービスはたくさんある。
単身女性向けに、女性スタッフだけでサービスする「レディースパック」、引っ越し先に到着したスタッフが作業前に新しい靴下に履き替える「クリーンソックスサービス」、引っ越しから1年以内であれば、模様替えのために家具を無料で移動してもらえる「家具移動サービス」…。多くは従業員たちのアイデアから生まれたという。
アートの業務提案制度のようなシステムは、多くの会社で存在するが、どれだけ生かされているかは会社によって異なる。アートの場合、従業員の小さな声を拾おうとする会社側の姿勢が強く、それが先進的なサービスに結びついているようだ。
「サービスにエンドマークはない」。アートの寺田千代乃社長の口癖だ。現場での顧客への細やかな気遣いや配慮が、新サービスを生み出す原動力になる。
取材中、担当者からも「今、いいアイデアが浮かびました」との声が飛び出した。(中山玲子)
本社=大阪府大東市泉町2-14-11
設立=昭和52年6月14日
事業内容=引越事業、国内物流事業など
売上高=非公開
従業員数=1930人(平成24年9月現在)