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自己紹介動画は新入社員の試練 エイコーが本社ロビーで放映する理由

ニュースカテゴリ:暮らしの仕事・キャリア

自己紹介動画は新入社員の試練 エイコーが本社ロビーで放映する理由

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エイコー本社1階に設置された、新人社員の自己紹介を流すディスプレー=大阪市中央区  OA機器販売会社として知られるエイコー(大阪市中央区)は毎年、新入社員の自己紹介動画を本社ロビーのディスプレーで放映し、他の社員や来客に見てもらう。通り一遍の抱負だけでなく、アイドル好きを公言したり、「体育会系」をアピールしたりと、性格やプライベートまで踏み込むユニークさだ。「誰でも一度で顔と名前を覚えてもらえる」試みとして脚光を浴びるが、きっかけは何だったのか。

 自然に覚えてしまう

 「趣味は音楽とカメラ、散歩とそして…アイドルがすごい好きです!」

 今年4月。本社1階ロビーのエレベーター前に設置された40型のディスプレー。入社したばかりの20代「眼鏡男子」が元気な声でPRする映像に、来客は思わず足を止めた。

 このほか、ある女性は「趣味は献血で体力が有り余っています。体育会系です」と宣言。別の男性は「特技は12年間続けた剣道。自信があるのは、この笑顔です」と得意のスマイルを披露する。

 自己紹介映像の放映中、名前、生年月日、血液型、出身大学、趣味などが表示され、「一度見たら、本人の顔だけでなく、性格まで覚えてしまう」(社員)と好評だ。

 映像は4月いっぱい、計12人の自己紹介映像(各1分)が、同社の営業時間中は繰り返し映し出された。

 ロビーのほか、社員に配布されるタブレット型端末や4階の営業関連フロアにあるディスプレーでも放映された。

 もっとも、映像に見入ってしまい、エレベーターに乗り遅れるハプニングも続出したとか。

 初対面でもコミュニケーションが円滑に

 新人社員の自己紹介動画の放映を始めたのは、平成23年。通常、エレベーター前のディスプレーでは、会議の場所や時間などを告知しているが、社員の老松信子さん(現コーポレートデザイン本部所属)から「新入社員の名前や情報を社内で共有できないだろうか」と提案があり、取り組みが始まった。

 同社の新人社員は、入社してほぼ1カ月間は外部の施設で社外研修を受ける。

 本社にはほとんどおらず、先輩社員とのコミュニケーションが不十分だった。

 しかし、自己紹介動画の効果は大きく、配属される頃には顔や性格が広く社内外に知られるようになる。

 2年前に入社した男性社員は「上司や先輩が自分のことを覚えてくれていたので、スムーズに職場に溶け込めた」と打ち明ける。

 試練は、撮影?!

 しかし、撮影は、新入社員の最初の“関門”でもある。入社式のわずか数時間後、他の同期が見守る中、独自色のある自己紹介文をカメラに向かってスピーチしなければならないからだ。撮り直しはほとんどなく、自分の印象を、この1分間の動画に詰め込まなければならないのだ。

 「手が汗でぐっしょりとなるほど緊張し、笑っているつもりでしたが、顔はこわばっていました」。撮影を体験した営業部門の男性はこう振り返る。

 エイコーが、新入社員にこんな“試練”を課すのには、ちゃんと理由がある。

 営業職が社員の約60%を占める中、幹部は「まず自分をアピールすることが仕事の入り口。自己紹介の難しさを体感してほしい」と狙いを明かす。

 ある社員は「入社時の自己紹介映像が反面教師。魅力的な笑顔の作り方を考えるようになった」という。

 映像発展の可能性

 エイコーは近年、OA機器販売会社としての枠にとらわれず、節電商材やメガソーラー設備の設計・施工などの多角化にも乗り出しているが、事業分野が専門化し、全社的な情報共有は年々、難しくなっている。

 だが、新入社員の自己紹介動画の成功をきっかけに、各事業分野の仕事を紹介する映像もつくってみようとの機運が盛り上がってきた。

 自己紹介動画が、社内の情報共有化のツールに発展していくかもしれない。(板東和正)

◇会社データ◇

本社=大阪市中央区南船場2-5-2エイコービル

設立=昭和49年1月

事業内容=OA機器関連事業など

資本金=9千万円

売上高=152億円(平成24年度)

従業員数=350人(25年1月現在)

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